2026-03-29 08:00チーズとウジ虫

チーズとうじ虫に悩んで遅刻するタイプの玉依です
「世界はチーズから湧き出る蛆虫の如く創造された」と主張した1500年代の粉挽屋メノッキオの異端審問記録を見てしまったら、そりゃ悩まざるを得ません。
『チーズとうじ虫』は魔女裁判や異端審問研究の第一人者カルロ・ギンズベルグによってまとめられた1583年9月の異端審問記録です。
一般的に歴史とは異性者によって作られるため「上から下へ文化が伝播する」と考えられがちですが、被支配者は単に記録に残らないため全く文化的な影響を持たないのか?と問われればそうではない、というのが彼の主張。
そして1583年に処刑されたメノッキオは一介の粉挽屋に過ぎず、かれの主張はいくつかの本から得た知識をヒントに、彼なりに咀嚼された「何ら影響を持たない神学」に過ぎません。
しかし、彼の異端審問記録から、16世紀の民衆が宗教についてどのように考えていたのか。非常に興味深い考察を与えてくれます。
正直、玉ちゃんは16世紀は専門外なのでまっっったく理解できないのですが!!!
メノッキオの考える創世とは「チーズからウジ虫が這い出るが如く生まれ、混沌としている」。神とは目に映る全てであり、イエスとは我々と同じ次元の存在である。もしもイエスが人類の罪を贖ったのであれば、そもそも罪は罪を犯した人間が贖うべきではないのか?世界には様々な宗教があり、キリスト教を知らないだけで救われないのは可哀想ではないか。であれば、非キリスト教徒も彼らが信じる神によって救済されるべきではないのか。
メノッキオの裁判では、彼が読んだ本の目録も記録されており、その中には俗語訳の聖書や、なんと無削除版の『デカメロン』もある。
今日の研究では、近世ヨーロッパの識字率について見直されています。「文字は読めるけど書けない人、書けるけど読めない人など多様であり、また文字を読める人が本を読んであげる文化があった」。即ち、一昔前に言われているような「近世ヨーロッパの人々は文盲ではなかった」という議論です。
個人的には『チーズとうじ虫』で印象的なのは、メノッキオ君の議論が荒唐無稽でありながら理論整然としていることです。
『チーズとうじ虫』は物語チックに展開された異端審問記録のまとめであり、優れた研究書です。一方で、私はその分野について専門外であり、控えめに言って何言っているのかまっっったく分かりません。
ふーん、メノッキオくんが考える「創世」ってそうなんだー、くらい。
ただ、メノッキオ君の神学は何ら影響を与えないものの、それだけの複雑さを持ちうるだけの知識体系があること。また、審問記録では証人に立たされた人々が、彼の人物像について好印象であること。
つまり、陰惨な「魔女狩り」とは到底かけ離れた異端審問であったことが読み取れます。
しかしカルロ・ギンズブルグが指摘するように、歴史学は16世紀の農民の声を聞くことができない。なぜならば、記録がないから。
民俗学や文化人類学では生き生きと様相が描かれる。一方で、それが真実かと問われれば、注意が必要である(意訳)ジレンマはその通りで、
異端審問記録を集めまくって、丁寧に分析したカルロ・ギンズブルグですら「16世紀の民衆が、宗教についてどう考えているのか分からんな」と言っているのだから、我々パンピーには知る由がありません。
が、やっぱりメノッキオ君の理論整然とした受け答えは特筆するものがあります。
世界はチーズからうじ虫が這い出るが如く、産まれた。キリスト教進学に対する反駁がそんなに豊かではない粉挽屋レベルにも存在し、単に記録に残ってないor埋もれていただけで決して文化は上流階級からの押し付けではない。
民衆文化に息づく知識体系があったのではないか?と示唆された非常に面白い研究でした
丸の内の丸善にあるので是非、手に取ってみてください〜
3階の世界史コーナーにあります。近くにあるアナール学派のル・ロワ・デュエリの『モンタイユー』もおすすめです。『ローマ人の物語』が好きなら、面白いと思う。
![チーズとウジ虫(2026-03-29 08:00) | 玉依[Arrest]に2026-03-29 08:00掲載の日記【SMスナイパー】全国のSMクラブ・風俗・M性感・バー専門サイト](/img/logo.png)


2026-03-29 20:36掲載